Nel (Flannel) Dripper

ネルドリッパー

ドリッパー

喫茶店の「とろりとした一杯」の正体、ネルドリップ。ネルとは布(フランネル)のフィルターのことで、紙の代わりに布で濾すいれ方です。日本ではほとんど使われていないの? どんな味になるの? 淹れ方やお手入れは?——ネルドリッパーだけにしぼって、初心者の方にもわかるようにやさしく解説します。

そもそもネルドリッパーって何?

ネルドリッパーとは、「ネル」=フランネル(flannel)という起毛した布でできたフィルターで、コーヒーを濾して淹れる道具のことです。紙のフィルターを使うペーパードリップに対して、こちらは布で濾すので「布ドリップ」とも呼ばれます。見た目は、針金の枠や木の持ち手に、袋状の布フィルターがついたシンプルな形。コーヒー好きの間では「究極のいれ方」として知られ、喫茶店の名店が長年こだわってきたスタイルでもあります。まずは『ネル=紙のかわりに使う布のフィルター』とおぼえておけば大丈夫です。

日本でネルドリップはよく使われている?

「ネルドリップって、もう使われていないの?」と思われがちですが、答えは半分イエス・半分ノーです。じつはネルドリップは、日本の喫茶店文化の中心にあったいれ方。昭和の純喫茶や老舗の喫茶店では、長いあいだネルドリップが定番でした。その後、手軽で洗い物のいらないペーパードリップが1950年代以降にひろまり、一般家庭ではペーパーが主流になっていきます。とはいえネルが消えたわけではありません。今でも自家焙煎の名店やこだわりの喫茶店では、ネルドリップこそが「最高の一杯」として現役で使われています。つまり『家庭ではペーパーに押されて少数派、でも名店の世界では今も王道』というのが正直なところ。だからこそ、ネルという選択肢を知っておくと、おうちコーヒーの世界がぐっと広がります。

場所ネルドリップの立ち位置
昭和の純喫茶・老舗喫茶店長いあいだ定番として使われてきた
自家焙煎の名店・専門店今も「究極の一杯」として現役
一般家庭手軽なペーパーが主流。愛好家が楽しむ

必ず「ネルフィルター(布)」を使う

ここが大事なポイントです。ネルドリッパーは、布のフィルターそのものが主役の道具。紙フィルターはセットしません(できません)。針金の枠や持ち手は、あくまで布を広げて支えるための骨組みで、実際にコーヒーを濾しているのは袋状のネル(布)です。そしてこの布は消耗品。使うほどにコーヒーの成分がなじんで味が育っていきますが、いっぽうで少しずつヘタっていくので、目安として数十回ほど使ったら新しいものに交換します。交換用のネルフィルターだけを買い足せるので、枠は長く使い、布だけを取り替えていくイメージです。なお布には起毛した面(けば立った面)とそうでない面があり、どちらを内側にするかはメーカーによって流儀が違うので、お使いの製品の説明に従ってください。

ネルで淹れると、どんな味になる?

ネルドリップの魅力は、なんといっても「とろりとした、まろやかな口当たり」です。よくベルベットや絹にたとえられる、なめらかでやわらかい舌ざわりになると言われます。理由は布ならではの濾し方にあります。紙は目が細かく、コーヒーオイル(うまみやコクのもと)をかなり吸い取ってすっきりクリアな味に。いっぽうフレンチプレスは金属の網なのでオイルも微粉もそのまま通り、重厚だけれど粉っぽさも残りがち。ネルの布は、ちょうどその中間。オイルはほどよく通しつつ、微粉はしっかり抑えるので、『コクとクリアさの両立』ができるのです。だから同じ豆でも、ネルで淹れるとまるみを帯びて、甘さやとろみを強く感じやすい——これがファンを生む理由です(感じ方には個人差があります)。

味わいの立ち位置 — ネルはちょうど中間 ペーパー クリアで すっきり オイル少なめ ネル(布) とろりと まろやか コクとクリアさ を両立 フレンチプレス オイル全開で 重厚 粉っぽさも残る ← クリーン・すっきり コク・ボディ感 →
ネルは、紙のクリアさとフレンチプレスのコクの「ちょうど中間」
ペーパーネル(布)フレンチプレス
口当たりすっきり軽やかとろりまろやか重厚
オイル感少なめ(紙が吸う)ほどよく通す全開で通す
クリアさとても澄む澄みつつコクも粉っぽさが残る
手間手軽・使い捨てお手入れが必要手軽

ネルドリップの淹れ方とポイント

淹れ方の考え方は基本のハンドドリップと同じですが、ネルは「ゆっくり、たっぷり」がコツです。①お湯は90〜93℃——沸騰直後より少し落ち着かせた温度に。②挽き目は中挽き〜中粗挽き——ペーパーよりほんの少し粗めが目安。③粉はやや多め——ネルはお湯が抜けやすいので、しっかりめの量にすると味がのります。④まず蒸らし——粉全体がしめる程度に少量注ぎ、30〜40秒待ちます。⑤本注ぎはゆっくり——中心から「の」の字を書くように、細くやさしく数回に分けて注ぎ、全体で3分ほどかけて落としきります。ネルは布がやわらかく形が動くので、注ぐお湯の勢いで暴れないよう、いつも以上に静かに注ぐのがおいしく淹れるいちばんのポイントです。

ステップポイント
湯温90〜93℃(沸騰直後より少し落ち着かせる)
挽き目中挽き〜中粗挽き
粉の量ペーパーより少し多め
蒸らし少量注いで30〜40秒待つ
注ぎ方細く・ゆっくり「の」の字。約3分で落としきる

使い始め(おろし方)とお手入れ

ネルは手間がかかる道具です。でも手順さえ知れば、こわくありません。【使い始め(おろし方)】新品のネルには糊(のり)がついているので、まず水でよくもみ洗いして落とします。そのあと、鍋にお湯をわかし、出がらしのコーヒー粉を少し入れて、ネルを15〜20分ほど一緒に煮ます。こうすると布に残った布くささが取れ、コーヒーの色になじんで、味がまろやかになります。【使ったあと】コーヒーかすを捨て、洗剤は使わずに流水でよくもみ洗いします(洗剤は布に残って味を損なうためNG)。可能ならもう一度お湯でさっと煮ておくと清潔です。【保管】ここが最重要。ネルは乾かすと布が固くなって風味が落ちるため、乾かさないのが鉄則です。水を張った清潔な容器にネルを浸け、冷蔵庫で保管します。水は1日1〜数回とりかえ、次に使うまで濡れた状態をキープします。長く使わないときは、水気を切って冷凍保存という方法もあります。この「濡れたまま冷蔵」の一手間を続けられるかどうかが、ネルドリップと長く付き合えるかの分かれ道です。

ネルと付き合う3ステップ 1 おろす 新品は糊を落とし 粉と一緒に煮る 2 淹れる 中挽き・粉多め ゆっくり注ぐ 3 保管する 洗剤は使わず 水に浸けて冷蔵
おろす→淹れる→濡れたまま冷蔵。この3ステップがネルとの付き合い方

こんな人に向いている(向かない)

まとめると、ネルドリップは「手間をかけてでも、とっておきの一杯を淹れたい」人にぴったりの道具です。喫茶店の味を家で再現してみたい人、まろやかでとろみのあるコーヒーが好きな人、道具を育てる楽しみを味わいたい人には、これ以上ない選択肢。逆に「毎朝サッと手軽に」「洗い物や保管の手間はかけたくない」という人には、正直ハードルが高めです。まずはペーパーで基本をつかんでから、休日の一杯にネルを試す——そんな始め方が、いちばん失敗が少なくおすすめです。

向いている人あまり向かない人
喫茶店のような一杯を家で淹れたい毎朝とにかく手早く淹れたい
とろりとまろやかな味が好きキリッとすっきりした味が好き
道具を育てる手間を楽しめる洗い物や保管の手間は避けたい
休日にじっくり一杯と向き合いたいできるだけ道具を増やしたくない

※ 味や香りの感じ方には個人差があります。産地・標高・品種などの情報は、その産地で一般的な特徴をまとめた目安であり、 当サイトは特定の品質・健康・美容上の効果を保証するものではありません。

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